退職金がない勤務先で働いていると、老後のお金が不安になることがあると思います。私が老後への備えを考える中で取り組んだのは、生活費、毎月の収支、資産と負債の把握でした。数字を見て分かったのは、節約だけでは大きく手残りを増やせない、ということでした。この記事では、当時の経験を振り返りながら、家計の現在地を確かめる順番を整理します。
私自身、勤務先に退職金がないことは30代の頃から分かっていました。ただ、その頃はほとんど気にしていませんでした。
私は30歳頃から50歳まで研究に携わっていました。30代から40代前半は、給与は決して多くなく、家族の生活費やまとまった支出を払うと、貯金はなかなか増えませんでした。
それでも当時は、「研究で結果を残したい」という気持ちが強く、家計や老後の資金を長期的に考えることは後回しになっていました。「一生懸命働いていれば、お金は何とかなるだろう」と、どこかで考えていたのだと思います。
45歳で転勤した頃、引っ越し費用に加えて子どもの教育費も増え、家計が厳しくなりました。そこで、研究を続けながら週末の日当直を始め、収入を増やしました。
46歳で、老後に向けた資産不足を突きつけられた
老後に向けた資産不足を、より具体的に意識したのは46歳のときでした。
自分にあまり資産がないことを、何となく意識するようになっていた頃です。そこで資産形成について書かれた本を読み、一棟アパートを買ってみようと考えました。
ところが、不動産会社の社長と面談した結果、金融資産が十分ではないことなどを理由に断られました。
正直、かなり悔しかったです。
自分としては、それまで一生懸命働いてきたつもりでした。研究者としても、それなりに結果を出してきたという自負がありました。
それなのに、資産という別の物差しで見ると「足切りに遭った」ように感じ、少し屈辱に近い感覚すらあったことを覚えています。
ただ、この悔しさが、その後の資産形成を始める大きなエンジンになりました。
このときの経緯については、46歳で一度断られた私が、52歳で1棟目を買うまでにしたことで詳しく書いています。
家計を自分で把握し、老後への備えを考え始めた
そこから、老後への備えを考えながら、本格的にお金の勉強を進めました。
自分に必要なお金を考えるために、まず家計の把握に取り組みました。
それまで家計管理はほぼ妻に任せていましたが、自分でも毎月の収入と支出を確認するようにしました。金融資産や負債についても、一度すべて整理しました。
家計を整理する際に確認したい数字は、勤務医が資産形成を始める前に整理すべき3つの数字にまとめています。
最初の数年間は、毎月手作業で収支を計算していました。
ここで、少し意外なことがありました。
自分で家計を管理すれば、無駄な支出がかなり見つかるのではないかと思っていたのです。
ところが、実際に数字を見てみると、それほど削れるところはありませんでした。
もともと派手な生活をしていたわけではありません。当時の収支はほぼトントンで、毎月残るお金もほとんどありませんでした。
つまり、「無駄遣いをやめれば資産形成できる」という単純な状況ではなかったのです。
支出を把握したうえで、どうやって手残りを増やし、そのお金を資産に変えていくかを考える必要がありました。
いろいろ試して、自分に合う方法を探した
30代半ばには少額のFXを試していましたが、継続できる方法は見つけられませんでした。日当直を始めたことで、家計に少し余裕が生まれました。その翌年頃から、再び投資に取り組むようになりました。
FX、個別株、インデックス投資、トランクルーム、一棟アパートなどを経験しながら、自分に合う方法を探しました。
最初の頃は、高い利回りを求めて短期トレードをしたこともあります。
当然、最初から今の方法にたどり着いていたわけではありません。
試行錯誤を続けた結果、現在は一棟アパートと、iDeCoを使ったインデックス積立を中心にしています。
一棟アパートを選んだのは、不動産が安全だからではありません。
空室、修繕、金利、融資などのリスクがありますし、誰にでも向いている投資だとも思っていません。
ただ、私の場合は、短期トレードより収支を見通しやすく、「毎月のキャッシュフローを少しずつ増やしていく」という考え方に合っていました。
老後資金を考えるうえで大切なのは、特定の投資方法を選ぶことよりも、自分に必要な金額と現在地を把握したうえで、自分に合った方法を選ぶことだと思います。
退職金がなくても、まず「今いくら必要か」を把握する
今の知識でゼロから老後設計を始めるなら、最初に確認するのは現在の生活費です。
毎月いくら必要なのか分からなければ、老後にいくら用意すればよいのかも分かりません。自分に必要な金額を考える方法は、勤務医はいくらあれば自由になれるのか|自分なりの「Enough」を決めようでも書いています。
次に見るのが、毎月の収支です。
固定費を確認し、見直せるものがあれば見直します。ただし、私自身がそうだったように、すでにそれほど無駄がない家庭もあります。
その場合は、節約だけで解決しようとしない方がよいと思います。
そのうえで、現在の金融資産、負債、将来の年金額を確認します。
資産が少なくても構いません。キャッシュフローがなくても構いません。
大切なのは、資産やキャッシュフローが十分ではないのに、「何となく大丈夫だろう」と考えないことです。
現在地が分かれば、次に何をすればよいのかを考えられるようになります。
退職金があるかどうかも重要ですが、それだけで老後が決まるわけではありません。
生活費、年金、金融資産、資産から得られる収入、そして必要であれば60代以降の労働収入まで含めて考えると、老後のお金はかなり具体的に見えるようになります。
まだ資産形成の途中でも、不安は以前より小さくなった
私はまだ資産形成の途中です。
60歳以降にどの程度働くのかも、今の時点では決めていません。60歳までにどれだけ資産からのキャッシュフローを作れているかを見て、判断するつもりです。
それでも、46歳の頃と比べると、お金に対する不安はかなり小さくなりました。
理由は、十分な資産を持ったからではありません。
資産とキャッシュフローが少しずつ増えていることを、数字で確認できるようになったからです。
毎月どのくらい手元に残るのか。
次に投資できる時期はいつ頃になりそうか。
このまま進んだ場合、数年後にどの程度の状態になっている可能性があるのか。
以前は漠然としていたことが、ある程度計算できるようになりました。
将来が完全に分かるわけではありません。
それでも、「今どこにいて、どちらに進んでいるのか」が分かるだけで、不安はかなり小さくなります。
退職金がないこと自体よりも、私にとって問題だったのは、自分の現在地を知らないまま働き続けていたことでした。
老後が不安なら、最初にやるべきことは、特別な投資を探すことではありません。
まず、生活費、収支、資産、負債、年金を一度数字にしてみる。
私にとって、家計の現在地を知ったことが、その後の資産形成を考える土台になりました。
家計の数字を確認する方法は、自分が続けやすいものでよいと思います。Excelと家計簿アプリのどちらを使うか迷う方は、「勤務医の家計管理はExcelと家計簿アプリのどちらが続けやすいか」も参考にしてみてください。


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