勤務医が不動産投資を始める前に確認すべき数字

不動産購入前に確認する数字。家計と物件それぞれの備えを表すイラスト

不動産投資に興味を持つと、物件価格や利回り、いくら融資を受けられるかが気になると思います。

私もそうでした。ところが、実際に融資条件が出ると、別の不安が出てきました。

「この自己資金を払った後も、生活と物件の運営を続けていけるだろうか」

融資を受けられることと、自分が安心して持ち続けられることは、同じではありませんでした。

購入前に確認したいのは、買うために必要なお金と、買った後に残るお金の両方です。

購入経験を踏まえ、整理したい数字と、購入を見送る条件をまとめます。

1.購入費用と、購入後に残す現金を分ける

購入に必要なのは頭金だけではありません。仲介手数料、登記費用、融資費用、保険料に加え、引き渡し後の不動産取得税や修繕も含めて確認します。

そのうえで、次の三つを書き出します。

  • 購入時と購入直後に支払う自己資金:合計__万円
  • 支払い後に残す家計用の現金:__万円
  • 支払い後に残す物件用の現金:__万円

家計用は生活費や教育費、納税などに必要なお金。物件用は空室や設備交換、修繕などに備えるお金です。同じ現金を両方の備えとして数えないようにします。

私も1棟目では、購入後の現金が気になり、何度も計算しました。必要額は家族や建物の状況で変わり、私の条件を一般的な基準にはできません。

当時の判断は、「不動産投資の1棟目に大きな自己資金を入れてよいか|私が確認した判断基準」に詳しく書いています。

2.税引後の手残りと、その使い道を確認する

家賃の全額を使えるわけではありません。運営費、修繕費、ローン返済、税金を考える必要があります。

会社の資料でも、「手残り」が満室前提なのか、募集費や原状回復費を含むのか、税引前なのかを確認します。

計算方法は、「家賃収入・返済・減価償却から『本当の手残り』を計算する方法」にまとめています。その結果を、次の順番で整理します。

  • 年間の税引後キャッシュフロー:__万円
  • 将来の修繕などに備えて確保する現金:__万円
  • 差し引き後、生活費や再投資に回す候補額:__万円

その年に支払う修繕費は一つ目の計算に反映し、二つ目は翌年以降のために残すお金です。資料ですでに差し引かれている備えは、二重に引かないようにします。

3.条件が悪くなった場合も、資金が続くかを見る

私は、購入検討時にその物件で実際に貸していた部屋のうち、最も低い月額家賃を使い、全室をその家賃まで下げた場合も試算しました。ただし、それだけで十分な想定とは限りません。

検討する条件を、数字に置き換えます。

  • 空室:何室が、何か月空くか
  • 家賃:現在より何%下がるか
  • 修繕:いつ、いくら必要になるか
  • 金利:変動金利の場合、適用金利が何%になると返済額はいくらになるか

募集状況、修繕履歴、融資条件をもとに、複数の変化が重なる場合も確認します。

特に修繕は時期も重要です。毎年積み立てる計画でも、購入直後の工事には間に合わないことがあります。

年間収支が黒字かに加えて、支払いの時点で現金が足りるか。家計用のお金を守れるか。そこまで見て判断します。

4.減価償却費が減った後と、勤務を減らした後を見る

私は築古物件の減価償却を活用しています。ただし、減価償却費が減れば、ほかの条件が同じでも税負担が増える場合があります。

また、不動産所得の赤字のうち、土地取得のための借入金利子に対応する部分などは、給与所得と損益通算できません。個別の税額は税理士に確認します。

勤務医として整理したいのは、次の三つです。

  • 勤務を減らしたい年齢と、その時点の給与の手取り見込み
  • 同じ時点の借入残高と年間返済額
  • 同じ時点の物件の税引後の年間手残り

給与所得が減ると、損益通算による税負担の軽減額も小さくなる場合があります。現在の軽減額を、そのまま将来に当てはめないことが大切です。

物件への持ち出しを補うために、減らす予定だった当直や非常勤を続けることにならないか。希望する働き方とつなげて考えます。

5.売却後に残る現金と、売る時期を確認する

売却時は、想定価格から借入残高、売却費用、税金を差し引いた後の現金を確認します。

税金がかかる利益は、売却代金から借入残高を引いた額ではありません。取得費や譲渡費用などを差し引いた「課税譲渡所得」に税率を掛けます。

建物の取得費は減価償却費相当額を差し引いて計算するため、購入価格より安く売っても、税務上の利益が生じることがあります。

個人が土地・建物を売る場合、売却年の1月1日時点の所有期間により、税率は原則として次のとおりです(2026年10月時点)。

  • 5年超(長期譲渡):20.315%
  • 5年以下(短期譲渡):39.63%

所得税・復興特別所得税・住民税の合計です。例えば課税譲渡所得が500万円なら、税額は長期で約102万円、短期で約198万円です。特例などを考慮しない比較ですが、売る時期で手残りは変わります。

単に「購入から5年」ではなく、売却年の1月1日時点で判定します。売却予定年の税制も確認します。

売却代金で借入返済や売却費用を賄えない場合、追加資金を用意できるか。売れるまで保有を続けられるかも確認します。

6.購入を見送る条件を決める

私なら、次の状態では購入をいったん見送ります。

  • 購入後に家計用と物件用の現金を確保できない
  • 質問しても収支の前提を確認できない
  • 少し条件が悪化すると、給与からの継続的な補填が必要になる
  • 減価償却費や給与が減った後の収支が成り立たない
  • 想定どおりに売れない場合の資金を確保できない

ただし、すべて分かるまで相談してはいけないわけではありません。私も面談で説明を聞き、資料を持ち帰って計算しながら理解していきました。

まずは購入に回せる金額と、残したい現金を書き出す。分からない項目は、面談で聞く質問にします。

相談先については、「勤務医の不動産会社選び|1棟目の購入で私が重視したこと」にまとめています。

相談した結果、今は買わずに準備を進めてもよいのです。数字を整理するのは、自分の生活と希望する働き方を守りながら、持ち続けられるかを確かめるためだと思います。

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