家賃収入・返済・減価償却から「本当の手残り」を計算する方法

不動産投資の収支を初めて確認したとき、手元にあったのは、不動産会社の物件概要書と金融機関の融資条件でした。

キャッシュフローという言葉は知っていても、年間で実際にいくら残るのかは分かっていませんでした。そこで、二つの資料を並べて計算するところから始めました。

販売資料の数字をそのまま使わない

最初に確認したのは、物件価格と満室想定の家賃収入です。

ただし、販売資料の家賃をそのまま使ったわけではありません。現状家賃に加えて、すべての部屋を最も低い家賃の水準まで下げた場合も試算しました。

そこから空室による損失や運営費を引き、ローン返済後に月いくら残るのかを確認しました。

初めての物件だったため、前提を何度も変えました。それでも最後に重視したのは、資料に書かれた月間利益ではなく、減価償却と税金まで反映した年間の手残りです。

この経験から、販売資料の数字を信じるのではなく、自分の前提で税引後の手残りを確認するようになりました。

三つの数字を分けて考える

私は物件の収支を、主に次の三つに分けています。

  • 税引前キャッシュフロー
  • 税引後キャッシュフロー
  • 資産形成額

まず、家賃収入から空室による未収入や管理料、募集費、原状回復費、保険料、固定資産税などを引き、さらにローン返済額を差し引きます。

ここまでが、実際の現金の出入りを表す税引前キャッシュフローです。

次に、減価償却費や借入金利息などを反映して不動産所得を計算します。

私は給与所得もあるため、不動産所得だけに税率を掛けるのではありません。

「物件を保有しなかった場合」と「保有した場合」で、所得税や住民税がどれだけ変わるのかを比較します。その差まで含めたものが、私の考える税引後キャッシュフローです。

さらに、税引後キャッシュフローに借入元本の返済額を加えた数字を、資産形成額として分けています。

元本返済によって借入残高は減りますが、そのお金を生活費や次の投資に使うことはできません。

そのため、私が最も重視しているのは、口座に残る現金に近い税引後キャッシュフローです。

元本返済と減価償却は性質が違う

ローン返済は、元本と利息に分けて考えます。

利息は原則として必要経費になりますが、元本返済は現金を減らしても必要経費にはなりません。

一方、減価償却費は、その年に同じ金額の現金を支払っていなくても、帳簿上は必要経費になります。

そのため、口座には現金が残っているのに、確定申告上の不動産所得は赤字になることがあります。

私の場合も、築古物件で減価償却費を大きく計上するため、この状態になることがあります。

不動産所得の赤字は、一定の範囲で給与所得などの黒字と差し引けます。これが損益通算です。

例えば、所得控除などを反映した後の課税所得が2,000万円の人に、不動産所得で500万円の赤字が出たとします。

単純化すると、税金を計算する所得は1,500万円まで下がります。

ただし、500万円がそのまま戻ってくるわけではありません。課税所得が下がった結果として、所得税や住民税の負担が減ります。

給与所得が高い人は、所得の一部に高い税率が適用されていることがあります。そのため、損益通算による税負担の減少額が比較的大きくなる場合があります。

一方、減価償却が少なくなり、不動産所得が黒字になれば、その分だけ税負担が増える可能性もあります。

高年収であれば必ず有利になるわけではなく、適用税率や所得控除、損益通算できる赤字の範囲によって結果は変わります。

現金収支と税額を分けて見る

減価償却費は現金の支出ではないため、税引前キャッシュフローから直接差し引きません。

一方、不動産所得と税額を計算するときには、必要経費として反映します。

概算すると、次のように考えます。

税引前キャッシュフロー

= 家賃収入
- 現金支出を伴う運営経費
- 借入金の元利返済額
- その年に支払った設備投資など

税引後キャッシュフロー

= 税引前キャッシュフロー
± 物件を保有したことによる税額の変化

損益通算によって税金が減れば、その減少額をプラスします。不動産所得が黒字になって税金が増えれば、その増加額を差し引きます。

大切なのは、減価償却費そのものが現金として入るわけではないことです。

減価償却によって不動産所得が変わり、その結果として給与所得を含めた税額が変わります。

なお、不動産所得の赤字がすべて損益通算できるとは限りません。土地取得のための借入金利子に対応する赤字など、対象外となる部分もあります。実際の税額は税理士への確認が必要です。

想定外の支出後にも資金が残るか

購入後は毎月の入出金を確認しています。

それでも、空室や修繕がいつ発生するかを正確に当てることはできません。

実際に運営するようになってからは、細かな予測を当てることより、想定外の支出が出た後にも資金が残るかを見るようになりました。

年間のローン返済額が家賃収入に占める割合も確認していますが、この数字だけで物件の安全性を判断することはできません。

家賃や空室率などの前提を厳しくしたとき、年間の手残りがどこまで減るのかを確認し、自分が引き受けられる範囲かどうかを考える。

今のところ、私はこの方法で物件の収支を見ています。

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