資産形成を始めようと思ったとき、NISAとiDeCoのどちらを優先するか迷う方は多いと思います。
私自身も、勤務医として働きながら資産形成を考え始めたころ、この2つをほぼ同じタイミングで始めました。
先に始めたのは旧つみたてNISAで、その約2か月後にiDeCoを開始しました。ただ、この2か月はiDeCoの口座開設に要した時間だったので、自分の感覚としては「ほぼ同時に始めた」というのが実際のところです。
当時の私は、「とにかく早く資産形成を始めなくては」という焦りに近い気持ちを抱えていました。
すでに余裕資金の一部はトランクルーム投資に回していましたが、それとは別に、毎月生まれる余裕資金も少しずつ運用しておきたい。そう考えて、インデックス投資を始めることにしました。
毎月どの程度なら無理なく積み立てられるかを考え、当時の旧つみたてNISAの上限額とiDeCoの掛金を組み合わせたところ、自分が想定していた積立額にちょうど近い金額になりました。
それが、両方を始めた率直な理由です。
iDeCoは最初だけ、少し面倒だった
実際に始めてみると、NISAとiDeCoで大きく違ったのは最初の手続きでした。
iDeCoは口座開設までに時間がかかり、手続きも正直、少し面倒に感じました。日々の診療で忙しい中、こうした事務作業に時間を取られるのは地味に負担です。
ただ、一度設定してしまえば、その後の管理にはほとんど手間がかかりません。
私はNISAもiDeCoも全世界株式のインデックスファンドを選び、積み立てを開始してから一度も商品を変更していません。
自動積み立てにしてしまえば、普段は投資していることすら忘れてしまうほどです。
振り返ると、これは積み立て投資との付き合い方として悪くない選択だったと思っています。
頻繁に値動きを確認したり、商品を入れ替えたりするより、最初に決めて、あとは放置する。
少なくとも、忙しい勤務医である私には、そのやり方が合っていました。
当初のiDeCoの目的は「節税」だった
iDeCoを始めた理由のひとつは、節税でした。
勤務医は給与所得が中心になることが多いため、税制上の優遇がある制度には魅力を感じます。
私も当初は、「使える制度なら活用しておきたい」と考えていました。
しかしその後、不動産投資を始めたことで、iDeCoに対する見方が少し変わりました。
資産形成全体を俯瞰して考えるようになると、iDeCoの節税額だけを細かく気にする必要はないのではないか、と思うようになったのです。
もちろん、税制上のメリットがあること自体は変わりません。
ただ、私にとってiDeCoの本当の価値は、節税とは別のところにありました。
それが、「資金を自由に引き出せないこと」です。
不動産投資を始めて、「現金」の価値観が変わった
不動産投資を本格的に考え始めると、手元の現金に対する感覚が大きく変わりました。
物件を購入するには自己資金が必要ですし、融資を受ける際にも、手元の現金は重要な評価材料のひとつになります。
そこで私は、保有していた旧つみたてNISAを売却し、不動産購入の自己資金に充てました。
正直なところ、当時はiDeCoについても「できることなら現金化したい」と思ったことがあります。
しかし、iDeCoは原則として60歳まで自由に引き出すことができません。
当時の私にとって、これは単純に不便でした。
不動産という次の投資先が見つかっているのに、お金を動かせないからです。
ところが、時間が経つにつれて、この「動かせないこと」に対する評価が、自分の中で逆転していきました。
売れなかったからこそ、積み立てを続けられた
もしiDeCoを自由に解約できていたら、私はおそらく売却していたと思います。
実際、NISAは不動産投資のために売却しました。
一方で、iDeCoは売ることができなかったため、そのまま積み立てを続けることになりました。
結果としてインデックス投資を長く継続できました。もちろん、相場には上がる時期も下がる時期もあります。それでも、長く保有する中で、資産が少しずつ積み上がっていく、いわゆる「雪だるま」のような増え方を実感できたのです。
これは、私にとって大きな経験でした。
積み立て投資では、長く継続することが大切だと頭では分かっています。
それでも、別の投資先が魅力的に見えたり、まとまった現金が必要になったりすると、長期で保有し続けるのは実際には簡単ではありません。
私自身、まさにそうでした。
だから今は、iDeCoの「資金が拘束される」という特徴は、必ずしもデメリットだけではないと考えています。
むしろ、私のように投資先に目移りしやすいタイプの人にとっては、強制的に積み立てを続ける仕組みとして機能することがあります。
ただし、iDeCoに入れすぎない方がよい人もいる
一方で、誰にでもiDeCoを勧めたいわけではありません。
特に、今後不動産投資や事業を始めたいと考えている方は、手元資金をどの程度残しておくかをよく考えた方がよいと思います。
勤務医は比較的収入が安定している一方で、転職、開業、不動産投資、子どもの教育費など、まとまった現金が必要になる場面もあります。
40代前半など、60歳までまだ時間がある方であれば、資金を長期間動かせないことが負担になる可能性もあります。
生活防衛資金まで投資に回す必要はありません。
また、積み立て金額が大きすぎて、毎月の値動きや残高が気になってしまうのであれば、無理なく続けられる金額かどうかを見直すきっかけにはなると思います。
私自身は、「設定したら忘れられるくらいの金額」で始めるのがちょうどよいと考えています。
毎月の収入から生活費や必要な支出を差し引いた余裕資金の中で積み立て、必要な現金はきちんと手元に残しておく。
そのくらいの距離感の方が、長く続けやすいと思います。
NISAとiDeCo、どちらが正解かではない
今振り返ると、私はNISAとiDeCoの両方を始めてよかったと思っています。
NISAは必要なときに売却できたからこそ、不動産投資へ資金を移すことができました。
iDeCoは売却できなかったからこそ、結果的に長期の積み立てを続けることができました。
NISAは「使えたから役に立った」。
iDeCoは「使えなかったからこそ役に立った」。
私にとっては、この違いがとても大きかったと思います。
だから今は、「NISAとiDeCoのどちらが得か」よりも、「そのお金をいつ使う可能性があるか」で考えるようになりました。
近いうちに使う可能性があるお金は、無理に長期間拘束しない。
一方で、60歳まで使わなくても困らない余裕資金であれば、iDeCoの不自由さが長期投資を続ける助けになることもあります。
勤務医の資産形成にも、一律の正解はありません。
私自身は、NISAもiDeCoも始めて正解でした。
ただ、もし今ゼロから始めるのであれば、「どちらが一番得か」を考える前に、
「このお金を今後何に使う可能性があるのか」
を、まず考えると思います。

コメント