勤務医は、一般的には「安定した高収入の職業」と見られています。
社会的信用があり、住宅ローンも通りやすい。
年収も一般的な会社員と比べれば高い水準にあります。
それなのに、
「年収は高いはずなのに、思ったほど資産が増えていない」
「勤務日数や当直を減らすと、収入が一気に落ちてしまう」
「この働き方を60代、70代まで続けられるのだろうか」
と、不安を感じている勤務医の先生も多いのではないでしょうか。
私自身も、まさにそうでした。
現在、私は訪問診療を中心に勤務医として働いており、給与収入は比較的高い水準にあります。さらに、築古アパートへの不動産投資も行い、給与以外の収入も少しずつ積み上げています。
それでも50代に入ってから、
「お金はある程度あるはずなのに、なぜか将来への不安が消えない」
と強く感じるようになりました。
子どもの教育費や親の介護、自分たち夫婦の老後。
そして、体力が落ちたときにも今と同じ収入を維持できるのか。
考えれば考えるほど、単に現在の年収が高いだけでは、安心できないことに気づきました。
勤務医がお金の不安を感じる原因は、収入の少なさではありません。
本当の問題は、収入の多くが自分の労働に依存していることにあります。
勤務医の不安は「収入が少ないから」ではない
多くの勤務医は、一般的な会社員と比べれば高収入です。
日々の生活費に困ることは少なく、家族を養い、旅行や趣味を楽しみながら、ある程度の貯金もできるでしょう。
では、なぜお金の不安が消えないのでしょうか。
私が考える大きな理由は、
働いている間は高い収入が得られても、働く量を減らした瞬間に収入も減ってしまうから
です。
勤務医として得ている収入の多くは、自分が現場に出ることによって発生します。
外来、病棟回診、手術、当直、訪問診療、オンコール、外勤。
診療科や勤務形態による違いはありますが、基本的には自分の時間と体力を提供することで、給与を得ています。
もちろん、労働によって収入を得ること自体が悪いわけではありません。
患者さんに直接関わり、医師として働くことには、大きな意味とやりがいがあります。
ただし、収入源のほとんどが自分の労働だけに偏っていると、
病気で働けなくなったとき
体力的に勤務日数を減らしたくなったとき
家族の事情で仕事をセーブしたくなったとき
に、収入も同時に減ることになります。
この構造が、勤務医のお金の不安の根底にあるのだと思います。
年収が高いほど、問題が見えにくくなる
勤務医の難しいところは、年収が高いために、問題が表面化しにくいことです。
たとえば年収が2,000万円前後あれば、日常生活で大きく困ることは少ないでしょう。
普通に生活できる。
家族を養える。
住宅ローンを返せる。
旅行にも行ける。
ある程度の貯金もできる。
そのため、表面的には何も問題がないように見えます。
しかし、冷静に考えると、その収入の多くは自分の労働によって成り立っています。
特に、当直、オンコール、外勤、スポット勤務などを組み合わせて収入を上げている場合、収入の高さと引き換えに、かなりの時間と体力を使っています。
若い頃は、それでも何とかなります。
30代や40代前半であれば、多少無理をしても回復できるかもしれません。忙しい時期も、気力と体力で乗り切れることがあります。
しかし、40代後半から50代になると、少しずつ状況が変わります。
疲れが抜けにくくなる。
当直明けの回復に時間がかかる。
睡眠の質が落ちる。
健康や家族との時間について考える機会が増える。
そして、ふと気づきます。
「今の年収は、自分が今と同じように働き続けられることを前提にしているのではないか」
この問いが出てきたとき、高収入であることと、経済的に安心できることは別だと分かります。
年収が高くても資産が増えない理由
勤務医の中には、年収が高いにもかかわらず、
「思ったほど貯金が増えていない」
「長く働いてきた割に、金融資産が少ない」
「毎月かなり税金を払っているが、将来の安心につながっていない」
と感じている先生もいると思います。
年収が高くても、受け取った金額がそのまま資産になるわけではありません。
所得税、住民税、社会保険料を支払い、住宅費や教育費、保険料、車、旅行などの生活費を差し引いた後に残る金額が、実際に資産形成へ回せるお金です。
高所得になるほど、税金の負担も大きくなります。
額面の年収が増えても、手取りが同じ割合で増えるわけではありません。
また、収入が増えるにつれて生活水準も上がると、年収は高いのに、資産形成へ回せるお金が少ないという状態になります。
勤務医の経済状態を考えるときは、年収だけを見るのではなく、
- 税金や社会保険料を差し引いた後、いくら残るのか
- 年間でいくら貯蓄や投資に回せているのか
- 今の収入がなくなった場合、何年生活できるのか
- 給与以外から毎月いくら入ってくるのか
を見る必要があります。
重要なのは、年収の高さではなく、税引後に手元へ残るお金と、そこから生まれる資産です。
「もっと稼ぐ」だけでは不安は消えない
勤務医がお金の不安を感じたとき、最初に考えやすいのは、収入をさらに増やすことです。
当直を増やす。
外勤を増やす。
スポット勤務を入れる。
より高収入の職場へ転職する。
もちろん、収入を増やすことは重要です。
特に、健康で十分に働ける時期に収入を確保し、その一部を資産形成に回すことは、合理的な選択だと思います。
ただし、「もっと働いて、もっと稼ぐ」だけでは、不安は根本的には消えません。
なぜなら、収入を増やすために、さらに自分の時間と体力を使うことになるからです。
当直を増やせば、収入は増えます。
しかし、疲労も増えます。
外勤を増やせば、手取りは増えるかもしれません。
しかし、家族との時間や休息の時間は減ります。
この状態を続けると、
お金は増えているのに、自由は増えていない
という状況になります。
そして、体力的に勤務を減らしたくなったときには、収入も一緒に下がってしまいます。
必要なのは、労働収入を増やすことだけではありません。
働いて得た収入の一部を資産へ移し、将来、自分が働かなくても収入を生む仕組みを作ることです。
勤務医の不安の正体は「選択肢の少なさ」
私は、勤務医のお金の不安の正体は、単なるお金の不足ではなく、選択肢の少なさにあると考えています。
たとえば、
今の仕事を続けるしかない。
当直をやめると収入が大きく下がる。
週5勤務を減らすと家計が成り立たない。
転職したいが、収入が下がるのが怖い。
資産形成を始めたいが、何から手をつければよいか分からない。
収入は高いのに、意外と身動きが取れない。
これが、勤務医の抱えやすい苦しさです。
一方で、給与以外の収入が毎月10万円、20万円、30万円と増えていけば、少しずつ選択肢が増えます。
当直を1回減らせるかもしれない。
外勤を減らしても生活水準を維持できるかもしれない。
給与が多少下がっても、より負担の少ない職場へ移れるかもしれない。
家族の事情に合わせて勤務日数を減らせるかもしれない。
給与以外の収入が、すぐに勤務医の年収を超える必要はありません。
自分が働かなくても入ってくるお金が少しずつ増えるだけでも、心理的な安心感は変わります。
お金の不安を減らすために必要なのは、大きな資産を一気に作ることよりも、自分の人生を選べる余地を広げることなのだと思います。
私自身も「このままでは危ない」と感じた
私は、もともと免疫学の研究に長く関わっていました。
研究者として約20年を過ごし、50歳で研究生活に一区切りをつけ、その後、臨床の現場に戻りました。現在は訪問診療を中心に働いています。
研究をしていた頃は、医師として臨床だけに従事した場合と比べると、収入面では遠回りをした部分があります。
その経験もあり、50代に入ってから、これからの収入と働き方について真剣に考えるようになりました。
医師免許があるから大丈夫。
以前は、どこかでそう考えていた部分があります。
確かに、医師免許は非常に強い資格です。
働く場所を見つけやすく、一定の収入も期待できます。
しかし、
医師として働けることと、働き方を自由に選べることは同じではありません。
週5日働ける。
当直ができる。
オンコールにも対応できる。
こうした条件があって初めて維持できる収入であれば、体力や家庭環境が変わったときに、働き方の選択肢は狭くなります。
病気になったらどうするのか。
親の介護が必要になったらどうするのか。
体力的にフルタイム勤務が難しくなったらどうするのか。
60歳以降も、今と同じペースで働きたいのか。
こうした問いに向き合ったとき、私は給与だけに依存する状態から、少しずつ離れる必要があると考えるようになりました。
私が不動産投資を始めた理由
私が築古アパート投資を始めた理由も、自分の労働だけに依存しない収入源を作りたかったからです。
不動産投資には、さまざまなリスクがあります。
空室、修繕、金利上昇、災害、家賃下落、管理会社との関係。
融資を受ければ、大きな借入も抱えることになります。
そのため、誰にでも簡単にすすめられるものではありません。
ただ、私にとって不動産投資は、勤務医としての信用力を使い、給与以外の収入を作るための有力な手段でした。
勤務医として安定した給与収入があるうちに、金融機関から融資を受けて資産を購入する。
入居者から得た家賃をもとに返済を進めながら、キャッシュフローを積み上げていく。
これは、勤務医の信用力を活用しやすい方法の一つだと思います。
勤務医は、金融機関から見れば、安定した給与所得と高い返済能力を持つ職業です。
その信用力を住宅や自動車などの消費だけに使うのではなく、将来の収入を生む資産の取得に使う。
この考え方は、私自身、もっと早く知っておきたかったことの一つです。
現在は築古アパートを保有し、減価償却も活用しながら、税引後の手残りを意識して資産形成を進めています。
まだ完成形ではなく、現在も試行錯誤の途中です。
それでも、給与収入だけに頼っていた頃と比べると、将来への見え方は変わりました。
給与以外から収入が入ることで、
「少し働き方を減らしても、すぐに生活が崩れるわけではない」
という感覚が、少しずつ持てるようになったからです。
「年収」よりも大切な税引後キャッシュフロー
勤務医は、年収を基準に自分の経済状態を判断しがちです。
年収2,000万円。
年収3,000万円。
年収4,000万円。
もちろん、年収は重要です。
しかし、生活や資産形成に実際に使えるのは、税金や社会保険料を支払った後に残ったお金です。
そのため、見るべきなのは、額面の年収よりも、
年間でいくら手元に残り、そのうちいくらを資産へ回せているか
です。
さらに、給与だけでなく、
不動産からの家賃収入
株式や投資信託からの配当
事業や副業からの利益
などを組み合わせることで、収入構造は変わります。
ここで重要なのは、見かけ上の収入を大きくすることではありません。
税引後のキャッシュフローをどう増やすか。
そのお金を、次の資産形成へどう回すか。
自分が働けなくても続く収入をどう作るか。
この視点を持つことが、勤務医の資産形成では重要だと思います。
給与以外の収入源は一つでなくてよい
自分の労働だけに依存しないためには、給与以外の収入源を作る必要があります。
その方法は、不動産投資だけではありません。
長期のインデックス投資を続ける。
高配当株や債券から収入を得る。
自分の専門性を活用して事業を作る。
発信や執筆、講師活動などから収入を得る。
それぞれに長所と短所があり、必要な資金、時間、知識、リスクも異なります。
大切なのは、流行している投資法をそのまま選ぶことではありません。
自分の年齢、家族構成、保有資産、収入、借入、リスク許容度、将来の働き方を踏まえて、自分に合う方法を選ぶことです。
また、最初から大きな収入を目指す必要もありません。
給与以外から月5万円入る。
次に月10万円を目指す。
その収入を再投資し、少しずつ増やしていく。
この積み重ねが、将来の勤務日数や当直回数を選べる力になります。
40代以降の勤務医が確認すべきこと
40代以降の勤務医は、20代、30代とは少し違った視点で、お金と働き方を考える必要があります。
若い頃は、臨床経験を積むこと、専門性を高めること、収入を増やすことが中心になります。
しかし、40代後半から50代になると、今の働き方を続けることだけでなく、将来減らせるかどうかも重要になります。
一度、次のことを確認してみるとよいと思います。
- 今の働き方を何歳まで続けたいのか
- 当直やオンコールを何歳まで続けられるのか
- 勤務日数を減らすと収入はいくら減るのか
- 毎年いくら手元に残り、いくら投資できているのか
- 現在の資産で何年間生活できるのか
- 給与以外から毎月いくら収入が入っているのか
- 親の介護や自分の病気が起きたとき、働き方を変えられるのか
- 60代以降に必要な生活費はいくらなのか
これらを整理すると、漠然とした不安が、具体的な課題に変わります。
「何となく心配だ」という状態では、何から始めればよいか分かりません。
しかし、
勤務を週4日にすると年間収入がいくら減る
当直をやめるには月いくらの収入が必要
60歳までに給与以外の収入を月いくら作りたい
という形まで数字にできれば、次に取るべき行動が見えやすくなります。
まとめ:高収入と経済的な安心は同じではない
勤務医がお金の不安を感じるのは、収入が少ないからとは限りません。
むしろ、高収入である一方、その収入の多くが自分の労働に依存していることが、不安の原因になっています。
勤務を減らせば、収入も減る。
体力が落ちても、生活費や教育費は必要になる。
年収は高くても、税金や生活費を差し引くと、思ったほど資産が増えていない。
こうした状態では、高収入であっても安心は得にくいものです。
大切なのは、年収をさらに上げることだけではありません。
税引後にいくら手元へ残っているかを確認すること。
その一部を資産形成へ回すこと。
給与以外の収入源を少しずつ育てること。
そして、勤務日数や働く場所を自分で選べる状態へ近づくことです。
私自身も、まだその途中にいます。
勤務医として働きながら、不動産収入を育て、発信活動にも取り組み、自分の労働だけに依存しない収入構造を作ろうとしています。
高収入なのに不安を感じているなら、まず確認したいのは「もっと稼ぐ方法」ではありません。
今の年収が、どのくらい自分の時間と体力に依存しているのか。
税引後に、年間いくら資産を増やせているのか。
勤務を減らしても生活できる仕組みがあるのか。
この3点を言葉と数字で整理するだけでも、不安の正体はかなり見えやすくなります。
不安は、資産形成を始めるべきサインかもしれません。
給与を得られる今のうちに、その一部を将来の収入を生む資産へ移していく。
それが、勤務医がお金の不安を減らし、将来の選択肢を増やすための第一歩だと思います。


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