投資を始める前の私は、長い間、貯金をすることしかしていませんでした。
医師として働き、ある程度のお金は貯まっていました。しかし、振り返ってみると、貯金額は長い期間ほとんど変わっていませんでした。
一方で、『金持ち父さん貧乏父さん』をはじめ、資産形成に関する本はいろいろ読んでいました。
「貯金だけではなく、投資をした方がよい」
ということは、頭では十分理解していたのです。
それでも、実際に自分のお金を投資に回すとなると、なかなか最初の一歩を踏み出せませんでした。
最初に考えたのは、一棟アパートだった
私が最初に興味を持ったのは、一棟アパートへの不動産投資でした。
ところが、実際に不動産会社へ相談してみると、当時の私の年収や自己資金では、希望していたような物件を購入するのは難しいことが分かりました。
そこで、
「今の自分でもできる、もう少し規模の小さな投資はないだろうか」
と探し始めました。
その中で候補になったのが、築古戸建投資とトランクルーム投資です。
築古戸建についてもいろいろ調べました。ただ、当時の私には、物件を購入してリフォームを行い、入居者を募集して運営していく姿が、どうしてもうまくイメージできませんでした。
一方、トランクルームについては、実際に管理会社へ話を聞きに行きました。投資に必要な資金、収益の仕組み、管理の方法などを説明してもらううちに、
「これなら自分にもできそうだ」
と具体的にイメージできるようになりました。
そこで私は、初めてまとまった自己資金を使い、トランクルーム投資を始めることにしました。
最初から黒字だったわけではない
私が購入したのは、新しく作られたトランクルームでした。
そのため、購入した時点ではまだ利用者が全くついていませんでした。その分、比較的買いやすい条件だったという側面もあります。
当然、最初の収支は赤字です。
ただ、これは想定外ではありませんでした。
事前のシミュレーションでも、利用者が増えてキャッシュフローがプラスになるまでには、半年から1年程度かかると考えていました。実際にも、おおむねそのように推移しました。
少しずつ利用者が増え、やがて毎月の収支も黒字になっていきました。
そのため、赤字の時期にもそれほど不安はありませんでした。むしろ当時は、資金が貯まればトランクルームをさらに買い増してもよいのではないか、と考えていたくらいです。
手間は少ない。でも、貯金とは違う
トランクルーム投資には、購入時にはそれなりの手続きがありました。また、事業として始めるための手続きや確定申告も必要になります。
ただ、一度運営が始まってしまえば、利用者の募集や日常的な管理、入金などは管理会社が行ってくれました。
普段の私の作業は、毎月の収支を確認する程度です。
感覚としては、現在行っている一棟アパート投資と、それほど大きく変わりません。投資ではありますが、自分の中では少し「事業」に近い感覚がありました。
その後、私はインデックスへの積立投資も始めました。
こちらは、さらに手間がかかりません。
口座開設や積立設定には多少時間がかかりましたが、一度設定してしまえば、毎月自動的に買い付けられます。
私にとってインデックス投資は、極端にいえば「貯金の延長」に近い感覚でした。
この違いは、両方を経験したからこそ実感できたことだと思います。
5年後、トランクルームを売却した
トランクルーム投資は、その後も順調に続きました。
最終的には売却まで含めて利益を残すことができたので、私にとっては十分満足できる投資でした。
それでも、約5年で売却することにしました。
理由は、トランクルームに不満があったからではありません。その5年間で、私自身の状況が変わったからです。
転職などによって収入が増え、投資を続けたことで資産も少しずつ増えていました。
すると、以前は手が届かなかった一棟アパート投資が、再び現実的な選択肢になってきました。
不動産会社にも改めて相談し、
「銀行からの評価を考えるなら、資産を整理して現金を厚くしておいた方がよい」
というアドバイスも受けました。
そこで私は、トランクルームだけでなく、それまで行っていたiDeCo以外のインデックス投資や株なども整理し、一棟アパート投資へ進むための資金を準備しました。
小さな投資から、より大きな投資へ資金を移したわけです。
今なら、同じトランクルームには投資しない
では、今の私が、当時と同じ条件のトランクルームを紹介されたら投資するでしょうか。
おそらく、しません。
一つの理由は、現在の私にとっては投資規模が小さいからです。
そしてもう一つは、現在はNISAの制度が以前より使いやすくなっていることです。
私自身の経験では、結果としてトランクルーム投資とインデックスへの積立投資の成績には、大きな差はありませんでした。
それなら、手間の少ないインデックス投資を優先すると思います。
ただし、これは、
「トランクルーム投資をしたのは間違いだった」
という意味ではありません。
むしろ逆です。
当時の私の資産規模では、無理なく始められるちょうどよい投資でした。
そして何より、初めてまとまった自己資金を投資に回し、毎月の収支を確認しながら運営し、最後に売却して投資を完結させるという一連の経験ができました。
もし、この経験がなければ、いきなり大きな借入をして一棟アパートを購入することには、もっと大きな恐怖を感じていたと思います。
私にとって小規模な投資は、「投資することに慣れるためのワクチン」のような役割を果たしたのかもしれません。
最初から大きな投資をする必要はありません。
自分の経済規模に合ったところから始め、経験と資金が増えれば、次の投資へ進む。
振り返ってみると、私はそうやって少しずつ投資の規模を大きくしてきたのだと思います。
今振り返ると、大切だったのは「最初から最適な投資を選ぶこと」ではなく、「その時の自分にできる投資から始めること」だったのかもしれません。


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